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看護学生のためのハラスメント対応ガイド

未来の医療を担うあなたへ、
安全な学習環境のために

Presented by コノラボ

もくじ

このガイドでは、看護学生が直面するハラスメント問題について、その実態から対策までを詳細に解説します。

第1章:なぜ看護学生がターゲットに?

学術機関におけるハラスメントは深刻な人権侵害ですが、中でも看護学生は特に高いリスクに晒されていることが世界的に報告されています。

カナダでは88.7%、オーストラリアでは50%の看護学生が、少なくとも一度はハラスメントを経験したというデータもあり、これは決して他人事ではありません。

脆弱な立場

看護学生は、教員や臨床現場の指導者に対して評価やキャリアの面で依存度が高く、不当な扱いを受けても声を上げにくいという、非常に脆弱な立場に置かれています。

第2章:ハラスメントの10類型

学生からの声に基づくと、看護教育現場のハラスメントは主に10の類型に分類できます。以降のスライドで、これらの類型について具体的に見ていきます。

  1. 言語的ハラスメント (暴言・人格否定)
  2. 無視・コミュニケーション拒否・孤立化
  3. 過度な課題や実習記録の押し付け
  4. 不透明・不公平な成績評価や単位認定
  5. 感情的・私情的な対応 (ターゲット化)
  6. 身体的接触・暴力・セクシャルハラスメント
  7. 個人情報漏洩・プライバシー侵害
  8. 実習先での差別的扱い・過剰な上下関係
  9. システム的問題・相談窓口の不備
  10. 差別 (年齢・性別・バックグラウンドなど)

類型1:言語的ハラスメント

学習への建設的な指導ではなく、学生の人格や存在自体を強く否定・侮辱する言葉を浴びせる行為です。

代表的なフレーズ

  • 「看護師に向いていない」「辞めた方がいい」
  • 「馬鹿なの?」「頭おかしいんじゃないの?」
  • 「親の育て方が悪い」「人間として終わってる」
  • 「そんな性格で患者さんを殺す気?」

学生の声: 「教員から『お前には単位やらない』と大声で言われ、泣いてしまいましたが『泣けば済むと思うな』とさらに責められました。」

主な影響

学習意欲の喪失、自己否定感の増大、精神的ダメージ、コミュニケーションの断絶

類型2:無視・コミュニケーション拒否・孤立化

挨拶や報告を意図的に無視したり、必要な指導を避けたりして、学生を孤立させる行為です。

典型的な事例

  • 挨拶をしても視線すら合わせず無視する
  • 一人だけ記録を見てもらえない、指導を受けられない
  • シャドーイングしようとすると目の前でドアを閉められる

学生の声: 「報告しようと声をかけても“後で”と逃げられ、結局何も聞いてもらえず‘指導不足’のまま実習が終わりました。ナースステーションでも無視され、孤独感がすごかったです。」

主な影響

学習機会の喪失、精神的ストレス・不安、二次的ないじめへの発展

類型3:過度な課題や実習記録の押し付け

学習意図が不明確なまま、学生の健康を害するほどの膨大なレポートや記録を要求する行為です。

典型的な事例

  • 毎日徹夜しても終わらない量のレポート修正を強要
  • 指導なく「再提出」を繰り返し、睡眠時間を奪う
  • 不合理な期限を設定し、未提出を厳しく叱責

学生の声: 「指導教員から“寝ずに書け”と言われ、毎日2時間も眠れず。疲労で実習先でも集中できず、『やる気がない』とまた怒られる悪循環でした。」

主な影響

心身の疲弊、学習意欲の低下、教育の質の低下

類型4:不透明・不公平な成績評価

明確な評価基準を示さず、教員の感情や好き嫌いで成績や単位認定を左右する行為です。

典型的な事例

  • 特定の学生だけ不合格にする
  • 理由を説明せずに評価を下げる
  • 「好かないから単位はやらない」といった発言

学生の声: 「同じミスをした他の子は合格で、私だけ不合格。理由を聞いても『なんとなく』としか言われず、理不尽でした。」

主な影響

学習への不信感、精神的ストレス、進路への打撃、教育現場への信頼失墜

類型5:感情的・私情的な対応(ターゲット化)

個人的な好き嫌いを指導に持ち込み、特定の学生だけを標的にして追い詰めたり、逆にえこひいきしたりする行為です。

典型的な事例

  • お気に入りの学生とそうでない学生で、あからさまに態度を変える
  • 男子学生だけ、社会人学生だけなど、特定の属性を狙い撃ちにする

学生の声: 「教員に“あの子は目上の人に可愛がられるのに、あなたは愛想がないから可愛くない”と言われ、目の前で態度が露骨に違いました。」

主な影響

学習環境の不公平感、ターゲットにされた学生の孤立とストレス、教育目的の歪み

類型6:身体的接触・暴力・セクハラ

不必要な身体的接触や、暴力、性的な言動で学生を辱める、最も悪質な行為の一つです。

典型的な事例

  • 肩を強く押す、腕を掴んで振り回す
  • 教科書で頭を叩く、殴る
  • 「胸が大きいね」など容姿に関する不適切な発言

学生の声: 「実習中のナースステーションで腕を掴まれて振り回され、周囲にスタッフも患者もいるのに止めてくれず怖かったです。」

主な影響

身体的恐怖と安全の脅威、精神的トラウマ、法的リスク

類型7:個人情報漏洩・プライバシー侵害

学生の通院歴や家族状況といった個人情報を本人の許可なく他者に漏らしたり、私物を無断で確認したりする行為です。

典型的な事例

  • メンタルクリニックへの通院を学年全体に言いふらす
  • カバンの中を勝手に開けて私物をチェックする
  • SNSで学生の個人情報や課題を晒す

学生の声: 「担任だけに話した家庭の事情を、他の教員やクラスメイトが知っていました。プライバシーを完全に踏みにじられ、不信感でいっぱいです。」

主な影響

信頼喪失と不安増大、名誉毀損、法的問題への発展

類型8:実習先での差別的扱い

実習先の看護スタッフなどから「学生は邪魔」といった態度を取られ、必要な指導や見学の機会を意図的に与えられない行為です。

典型的な事例

  • 「邪魔だから来ないで」と処置を見学させない
  • 挨拶や報告を無視し、「やる気ないなら帰れ」と怒鳴る
  • 休憩スペースを与えず、廊下で記録を書かせる

学生の声: 「実習中、指導看護師にまったく声をかけられず、ほぼ放置。相談しようとしても『今忙しい』とあしらわれ、結果何も学べないまま実習終了に......。」

主な影響

学習機会の喪失、過剰な上下関係による萎縮、看護職への意欲低下

類型9:システム・相談窓口の不備

学生がハラスメント被害を訴えても、学校や管理者が真剣に取り合わず、相談窓口が機能していない状況です。

典型的な事例

  • 教務主任に訴えても「教師同士で話すから」と対応されない
  • 師長に相談したら「受け入れてあげてるんだから」と逆に叱責される
  • ハラスメント窓口で「学生のわがままでは?」と一蹴される

学生の声: 「校内に相談窓口はあると聞いていたのに、いざ行ったら『単位をあげないぞ』と脅され、動揺して何も言えませんでした。」

主な影響

被害の拡大・隠蔽、学生の絶望感と不信感、教育機関としての信用失墜

類型10:属性に基づく差別

年齢、性別、国籍、社会人経験などの属性を理由に、不当な扱いや偏見の押し付けを行う行為です。

典型的な事例

  • 社会人入学者に「物覚えが悪い」と決めつける
  • 男子学生に「手先が雑だから看護師は無理」と冷遇する
  • 外国籍の学生に「言葉が分からないなら辞めろ」と言う

学生の声: 「30代で再進学しただけで『なんで今さら?』と馬鹿にされ、クラスでも教員からも浮いた存在にされました。」

主な影響

学習意欲と自尊感情の喪失、看護の理念との矛盾、教員・組織への不信感

第3章:ハラスメント発生の理論的背景

ハラスメントは個人の資質だけでなく、組織文化や学習プロセスによっても助長されます。

社会的学習理論 (Bandura)

「自分も昔はそう指導された」という経験から、虐待的な指導スタイルが、悪気なく再生産されてしまう理論です。攻撃的な行動が成功体験として学習されると、負の連鎖が生まれます。

権力格差 (Power Distance)

教員と学生の間に大きな権力差がある組織では、上位者の不適切な言動が「指導」として正当化されやすく、ハラスメントが常態化する傾向があります。

第4章:心身への深刻な影響

ハラスメントは、学生の心と体に深刻なダメージを与え、その影響は長期にわたることもあります。

精神的影響

  • うつ、適応障害、パニック障害
  • フラッシュバック、PTSD
  • 希死念慮、自傷行為
  • 自己肯定感の低下、不信感

身体的・学業への影響

  • 睡眠障害、食欲不振
  • 頭痛、めまい、吐き気
  • 留年、休学、退学
  • 学習意欲の喪失、看護職を諦める

特に看護学生は、一般の大学生と比較してうつや不安のリスクが高く、自殺念慮を経験する割合も高いことが報告されており、ハラスメントがその引き金となり得ます。

第5章:新しい視点「シビリティ」とは

ハラスメント防止には、「何が違反か」という法的線引きだけでなく、よりポジティブなアプローチが求められます。それがシビリティ (Civility) という考え方です。

シビリティとは、他者への敬意、礼節、思いやりに基づいた言動や態度のことです。ハラスメントが「してはいけないこと」のリストだとすれば、シビリティは「するべき望ましい関わり方」を示します。

看護教育におけるシビリティの例

  • 学生の質問に対し、誠意をもって個別に教える。
  • 学生の失敗を責めずに一緒に振り返り、次善策を考える。
  • 学生の小さな成長や改善点を捉えて具体的に褒める。
  • 教員から積極的に挨拶をし、相談しやすい関係を築く。

第6章:学生が望む対策と解決策

被害を経験した学生たちは、単に加害者の処分を求めるだけでなく、より建設的で安全な学習環境を望んでいます。

  • 第三者機関・相談窓口の整備: 学内の利害関係から独立し、訴えがもみ消されない、匿名で通報できる窓口を求めている。
  • 教員の意識改革と指導法の標準化: ハラスメント研修の義務化や、教員免許の更新制など、教員の質の担保を望んでいる。
  • 評価基準の透明化: 教員の感情で左右されない、明確で公平な評価基準の共有を求めている。
  • 実習環境の改善: 過度な記録物の削減や、実習先指導者との連携強化を望んでいる。

第7章:組織としての対策

ハラスメントは個人の問題ではなく、組織全体で取り組むべき課題です。安全な研究環境を構築するためには、以下のような対策が求められます。

  • 明確な方針の策定:いかなるハラスメントも許さないという「ゼロ・トレランス方針」を明確に掲げる。
  • 教育と研修:教職員と学生の双方に対し、ハラスメントの定義や影響、対処法に関する定期的な研修を実施する。
  • 公正な調査機関の設置:学内の利害関係から独立した、公平で透明性の高い調査委員会を設置し、すべての申し立てを真摯に調査する。
  • 加害者への厳正な処分:ハラスメント行為が認定された場合、地位や業績に関わらず、厳正な処分を下す。

最後に:一人で悩まないで

学生の皆さんへ

もしあなたがハラスメントに苦しんでいるなら、それは決してあなたのせいではありません。一人で抱え込まず、信頼できる人に相談してください。学内の窓口が機能していないと感じる場合は、外部の窓口を頼ることもできます。当社以外にも相談を受け付けている団体がありますので、下の一覧もご覧ください。

コノラボのアカハラ相談窓口へ

教育機関の皆様へ

ハラスメントは、学生の未来と組織の信頼を破壊する深刻な問題です。私たちは、ハラスメント防止研修の実施や、相談しやすい体制の構築支援を通じて、より良い教育環境づくりをサポートします。

法人向けお問い合わせはこちら

厚生労働省の指導ガイドラインは令和5年の改正で、学生のハラスメントに関する相談体制の整備を求めています →

相談できる外部の窓口

学内の窓口が使いにくいと感じる場合、学外にも相談を受け付けている窓口があります。それぞれ得意なことが違うので、目的に合わせて選んでください。

  • NPO法人 アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク(NAAH)
    大学・短大・高専・専門学校などを対象に、2001年から相談を受け付けています。起きていることを一緒に整理し、対処方法を考える窓口です。
  • NPO法人 全国看護学生はぐくみネット
    看護学生向けの相談窓口。公認心理師・看護師・保健師・看護教員などが対応し、公式LINEから24時間受け付けています。
  • 法務局の人権相談(みんなの人権110番/こどもの人権110番)
    相談は無料で、秘密は守られます。公的な記録として残したい場合の選択肢です。

連絡先や受付方法、それぞれをどう使い分けるかは、「看護学校でのハラスメント、どこに相談できるか」にまとめています。

あわせてお伝えしておきます。当社代表は、学術ハラスメントの実態調査や予防教育に取り組む任意団体 J-ARC(日本学術評価協議会) の代表を務めており、当社は同団体の協賛企業です。中立な第三者機関としてではなく、当社と関係のある団体としてご紹介しています。

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アカデミック・ハラスメント全般については アカデミック・ハラスメント対応ガイド もご参照ください。