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気をつけなければいけないハラスメント行為
Presented by コノラボ
このガイドでは、看護教育現場で起こりうるハラスメントについて、教員の皆様が知っておくべき知識と対策を解説します。
看護教員の皆様は、日々多くのプレッシャーの中で学生指導にあたられています。ハラスメント問題の背景には、教員自身の悩みやストレスも深く関わっています。
指導のつもりが、意図せず学生を深く傷つけ、ハラスメントと受け取られてしまう言葉があります。
学生からの声に基づくと、看護教育現場のハラスメントは主に10の類型に分類できます。
ハラスメントは個人の資質だけでなく、組織文化や学習プロセスによっても助長されます。
「自分も昔はそう指導された」という経験から、虐待的な指導スタイルが、悪気なく再生産されてしまう理論です。攻撃的な行動が成功体験として学習されると、負の連鎖が生まれます。
教員と学生の間に大きな権力差がある組織では、上位者の不適切な言動が「指導」として正当化されやすく、ハラスメントが常態化する傾向があります。
ハラスメントは、学生の心と体に深刻なダメージを与え、その影響は長期にわたることもあります。
特に看護学生は、一般の大学生と比較してうつや不安のリスクが高く、自殺念慮を経験する割合も高いことが報告されており、ハラスメントがその引き金となり得ます。
ハラスメント防止には、「何が違反か」という法的線引きだけでなく、よりポジティブなアプローチが求められます。それがシビリティ (Civility) という考え方です。
シビリティとは、他者への敬意、礼節、思いやりに基づいた言動や態度のことです。ハラスメントが「してはいけないこと」のリストだとすれば、シビリティは「するべき望ましい関わり方」を示します。
ハラスメントは個人の問題ではなく、組織全体で取り組むべき課題です。安全な研究環境を構築するためには、以下のような対策が求められます。
私たちは、ハラスメントを防ぎ、建設的な指導を実現するための考え方として「TEM(複線径路等至性アプローチ)」の導入を提唱しています。
これは元々、研究で用いられる手法ですが、「指導の各分岐点での関わり方が、最終的にどのような結果(アウトカム)につながるか」をシミュレーションするために非常に有効です。
学生指導の中には、課題の遅延や体調不良など、様々な分岐点が存在します。そこで教員がどのような対応(良い対応/悪い対応)を選択するかによって、学生の未来は大きく変わります。TEMは、そのプロセスを可視化し、教員が自身の関わり方を客観的に振り返り、より良い結果につながる選択肢を意識するためのモデルです。
課題の提出が遅れがちな学生Aさんへの対応を例に、良い対応と悪い対応を比較してみましょう。
| 悪い対応 ❌ | 良い対応 (TEMに基づく) ✅ |
|---|---|
| 提出遅延を一方的に厳しく糾弾する。「看護師に向いてない」「やる気がない」など、人格を否定する。 | まず理由を丁寧に聞く。「何か困っていることはない?」と問いかけ、家庭の事情やアルバイトなど、学生が置かれた背景を理解しようと努める。 |
| 原因を聞かずに「言い訳するな」と制止し、レポートの受理を拒否する。フォローなしで放置する。 | 学生の状況を考慮し、再提出の期限や補講の計画を柔軟に設定する。学習計画のカウンセリングや、他の学生からのサポート(ピアサポート)を紹介する。 |
| 体調不良を訴えても「自己管理ができていない」「甘えだ」と断定し、無理に実習に参加させる。 | 体調を最優先させ、休養を促す。校内の相談窓口やカウンセラーを紹介し、心身両面からの支援を検討する。 |
結果の違い:悪い対応は学生を孤立させ、退学や適応障害につながるリスクを高めます。一方、良い対応は学生との信頼関係を築き、課題解決を通じて学生の成長を促し、修学の継続につながります。
ハラスメント防止は、個々の教員の努力だけでなく、組織全体での体系的な取り組みが不可欠です。学生と教職員双方にとって安全な教育環境を構築するために、外部の専門知識を活用することも有効な手段です。
厚生労働省「看護師等養成所の運営に関する指導ガイドライン」は、令和5年の改正で第5-1-(13)に「ハラスメント」を明記し、相談体制の確保と防止体制の整備を求めるようになりました。 改正内容の解説はこちら →
本ガイドで解説したTEMの考え方や、具体的な事例検討を取り入れたハラスメント防止研修を実施しています。貴校の課題に合わせたカスタマイズも可能です。
教員研修について相談するJ-ARC(日本学術評価協議会)は、アカデミック・ハラスメントに関する専門機関です。学生の相談窓口としてだけでなく、学校の防止体制強化を支援する協働機関でもあります。
J-ARC公式サイトへあわせて読む:臨地実習の評価は、なぜハラスメントの訴えになりやすいのか/なぜ看護学生は沈黙するのか
アカデミック・ハラスメント全般については アカデミック・ハラスメント対応ガイド もご参照ください。